はじめに
経営事項審査(経審)の点数を上げたいと思ったとき、
多くの会社さんがまず意識するのが「技術者」や「工事実績」ではないでしょうか。
もちろん、技術職員数や完成工事高は重要です。
ただ、実務でよくあるのが、
- 資格者を増やしたのに点数が思ったほど伸びない
- 売上が上がっているのに評価が横ばい
- 同じ規模の会社なのに、なぜかライバルの方が点数が高い
といったケースです。
この差が出やすいのが、今回解説する 「社会性点数(W点)」 です。
社会性点数は、ざっくり言うと
「会社として、きちんとした体制で事業を行っているか」
を評価する項目です。
例えば、
- 社会保険に適正加入しているか
- 建退共(建設業退職金共済)に加入しているか
- 法令遵守の状況(処分歴など)はどうか
- 防災協定や地域貢献の取り組みはあるか
- CCUS(建設キャリアアップシステム)への対応状況
など、会社の姿勢・体制が点数として反映されます。
そして社会性点数の特徴は、
「資格者を急に増やす」「売上を急に伸ばす」といったことが難しくても、
手順を踏めば、現実的に改善できる項目が多い ことです。
逆に言えば、ここを放置すると
規模が小さくても取れるはずの点数を取りこぼしてしまい、
入札参加資格のランクや、受注機会に影響が出ることがあります。
この記事では、福井県で経審を受ける建設業者さん向けに、
- 社会性点数(W点)の全体像
- 主な評価項目と見落としやすい注意点
- 点数アップのために「今すぐ確認できること」
を、できるだけ実務目線でわかりやすく整理します。
「どこを整備すれば点数が伸びるのか」を把握したい方は、
まずは社会性点数の仕組みから一緒に確認していきましょう。
社会性点数(W点)とは?
経営事項審査(経審)における「社会性点数」は、
正式には W点(その他の審査項目〈社会性等〉) と呼ばれる評価区分です。
経審の総合評定値(P点)は、いくつかの要素を組み合わせて算出されますが、
その中でW点は、
「会社として、どれだけ健全かつ社会的責任を果たしているか」
を評価する項目になります。
売上高や利益といった“数字”ではなく、
企業としての体制や取り組みが点数化されるのが特徴です。
技術者点数との違い
前回の記事で解説した「技術者点数(Z点)」は、
保有資格や技術職員数など、人的能力が中心でした。
一方、社会性点数(W点)は、
- 法令を守っているか
- 社会保険に適正加入しているか
- 従業員の処遇は整備されているか
- 地域や防災への取り組みはあるか
といった、会社全体の体制や姿勢が評価対象になります。
つまり、
- 技術者点数 = 「人の力」
- 社会性点数 = 「会社の仕組み・体制」
というイメージです。
なぜ社会性点数が重要なのか?
社会性点数は、
- 点数の伸ばし方が分からず放置されがち
- しかし、差がつきやすい
という特徴があります。
特に福井県の入札実務では、
Cランク・Bランク帯の会社さんで、
わずか数点の差がランクや順位に影響することも珍しくありません。
その数点を左右するのが、
- 建退共への加入状況
- 社会保険の適正加入
- CCUSの対応
- 防災協定の有無
といった、社会性点数の項目です。
実際のところ、
「資格は揃っているのに、なぜかライバルより低い」
というケースの原因が、社会性点数にあることは少なくありません。
社会性点数は“後から整備できる”項目が多い
売上高や完成工事高は、急に増やすことはできません。
資格者も、すぐに増えるものではありません。
しかし社会性点数の多くは、
- 加入手続を行う
- 制度を整備する
- 登録を進める
といった、会社の意思決定で改善できる項目です。
つまり、
社会性点数は「戦略的に伸ばせるゾーン」
と言えます。
次の章では、
具体的にどのような項目が評価対象となっているのかを、
一覧で整理していきます。
社会性点数(W点)の主な評価項目一覧
社会性点数は、「会社の姿勢や体制」を点数化する項目です。
ここでは、実務上とくに影響の大きい項目を整理します。
① 社会保険の加入状況
まず最も重要なのが、社会保険への適正加入です。
評価対象となるのは、
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
です。
現在の制度では、加入義務があるにもかかわらず未加入の場合、
減点対象となるだけでなく、入札参加資格そのものに影響するケースもあります。
福井県でも、社会保険未加入は実務上かなり厳しく扱われます。
② 建設業退職金共済(建退共)
建退共(建設業退職金共済制度)への加入状況も評価対象です。
単に加入しているかどうかだけでなく、
- 手帳の適正管理
- 掛金の納付状況
なども確認されます。
実務では、
「加入しているつもりだったが、実際は未整備だった」
というケースもありますので、注意が必要です。
③ 法令遵守の状況(行政処分歴)
営業停止処分や指示処分など、
過去の行政処分歴がある場合は減点対象になります。
重大な処分があると、社会性点数に直接影響します。
「普段は問題なく営業しているから大丈夫」と思いがちですが、
過去の処分履歴は経審でしっかり確認されます。
④ 若年技術者の雇用・継続雇用制度
若年技術者の育成や、
高年齢者の継続雇用制度の整備も評価対象です。
これは、
「将来にわたって持続可能な体制を整えているか」
という観点からの評価です。
人手不足が深刻な建設業界では、
こうした体制整備の有無が点数に反映されます。
⑤ 防災協定・地域貢献活動
自治体との防災協定の締結など、
地域貢献への取り組みも評価対象になります。
福井県は豪雪や災害対応の重要性が高い地域です。
そのため、防災協定の有無は、
単なる形式的な項目ではなく、実務的にも意味を持ちます。
⑥ ISO認証等
- ISO9001(品質)
- ISO14001(環境)
などの取得状況も加点対象です。
ただし、取得コストとのバランスを考える必要があります。
会社規模によっては、費用対効果を慎重に検討すべき項目です。
⑦ 建設キャリアアップシステム(CCUS)
近年、特に注目されているのが
建設キャリアアップシステム(CCUS)への対応状況です。
- 事業者登録
- 技能者登録
- 能力評価
などの取り組みが評価されます。
今後さらに重要性が高まる可能性がある分野です。
社会性点数の特徴
ここまで見ていただくと分かる通り、
社会性点数は
- 売上や利益ではなく
- 「会社の整備状況」
が評価される項目です。
そして実務上は、
取り組んでいる会社と、何もしていない会社で差がつきやすい
という特徴があります。
次の章では、
福井県の入札実務で特に影響が出やすいポイントについて、
もう一歩踏み込んで解説します。
福井県で特に影響が出やすい社会性項目
社会性点数は全国共通の制度ですが、
実務での「効き方」は地域によって微妙に異なります。
福井県で経審・入札に関与していると、
特に影響が出やすいと感じるのは次の項目です。
① 社会保険の適正加入は“前提条件”
まず大前提として、社会保険の未加入は大きなマイナスです。
現在は制度上も厳格化されており、
- 健康保険
- 厚生年金
- 雇用保険
の加入義務があるにもかかわらず未加入の場合、
点数以前に、入札参加資格の審査段階で問題になることがあります。
「社長と家族だけの会社だから関係ない」と思われがちですが、
法人であれば原則として加入対象です。
ここは“加点項目”というよりも、
整備されていて当然の基礎体力
と考えるべき部分です。
② 建退共で差がつくケースが多い
福井県内でも、建退共への加入状況で
数点の差が出るケースは珍しくありません。
特にCランク・Bランク帯では、
数点の差 = ランクや順位に影響
ということが実務上起こります。
「元請けが入っていればいい」「うちは小さいから不要」
という誤解も多いですが、
経審上は、会社としての加入体制が評価されます。
まだ未加入の場合は、
比較的取り組みやすい改善項目のひとつです。
③ 防災協定は福井ならではの重要性
福井県は、豪雪・地震・風水害など、
災害対応が現実的なテーマです。
自治体との防災協定を締結している場合、
社会性点数の加点対象となります。
実際に、
- 除雪対応
- 災害時の応急復旧
といった地域貢献が、
企業評価と結びつく場面もあります。
単なる形式的な加点ではなく、
地域密着企業としての信頼性
が評価されるポイントとも言えます。
④ CCUSは“これから差が広がる分野”
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、
まだ取り組みに温度差があります。
しかし今後は、
- 技能者登録の有無
- 能力評価の取得状況
が、企業評価に直結していく可能性が高い分野です。
早めに整備している会社と、
後回しにしている会社では、
将来的に点差が広がる可能性があります。
福井県実務で感じるポイント
実務を通して感じるのは、
- 大きな会社だけが有利というわけではない
- 小規模でも、整備が行き届いている会社は強い
ということです。
社会性点数は、
「規模」よりも「整備状況」が問われます。
だからこそ、
戦略的に取り組めば、十分に巻き返しが可能
な分野でもあります。
次の章では、
具体的に 点数アップのために今すぐできること を整理します。
社会性点数を上げるために今すぐできること
社会性点数の良いところは、
会社の意思決定で改善できる項目が多いという点です。
売上や資格はすぐに増やせませんが、
体制整備は「確認」と「手続き」で前進できます。
ここでは、実務上おすすめしているチェックポイントを整理します。
① 社会保険の加入状況を再確認する
まずは基本の確認です。
- 法人であるのに厚生年金に未加入になっていないか
- 常勤従業員がいるのに雇用保険が未整備になっていないか
- 「家族だから不要」と誤解していないか
社会保険は「加点項目」というより、
整備されていないとマイナスになる前提条件です。
まずはここを確実に整えておくことが最優先です。
② 建退共の加入・運用状況を確認する
建退共は、
- 未加入 → 加入を検討
- 加入済み → 掛金納付や手帳管理が適正か確認
という二段階チェックが必要です。
「昔加入したきり放置」になっているケースもあります。
数点の差が出る分野ですので、
費用対効果の高い改善項目と言えます。
③ CCUS登録の状況を確認する
- 事業者登録は済んでいるか
- 技能者登録は進んでいるか
- 能力評価の取得は可能か
今後の制度動向を考えると、
早めに整備しておく価値がある分野です。
将来的に差が開く可能性があるため、
「後回し」にしない方がよい項目です。
④ 防災協定の可能性を検討する
所属団体や自治体との関係性によっては、
防災協定への参加が可能な場合があります。
特に福井県では、
- 除雪
- 災害時応急対応
など、地域性と直結する分野です。
該当する工種の会社さんは、一度確認してみる価値があります。
⑤ ISO取得は費用対効果を見極める
ISO認証は確実に加点されますが、
- 認証費用
- 維持費用
- 社内体制整備コスト
を考慮する必要があります。
小規模事業者の場合は、
他の改善項目を優先した方が効果的なケースも多いです。
社会性点数は「放置すると差が開く」
社会性点数の怖いところは、
何もしていないと、じわじわ差が広がる
という点です。
逆に言えば、
- 建退共に加入する
- CCUSを整備する
- 社会保険を適正化する
といった一つひとつの積み重ねで、
確実に改善できる分野でもあります。
経審は「一発逆転」ではなく、
体制整備の積み上げが結果に反映されます。
社会性点数に関するよくある勘違い
実務でよくある誤解を整理しておきます。
「うちは小さい会社だから関係ない」
社会性点数は会社規模ではなく、
体制整備の有無が評価されます。
小規模でも、
- 建退共に加入している
- 社会保険が適正
- CCUSを整備している
会社は確実に点数を積み上げています。
規模よりも「整備状況」が問われる分野です。
「資格があれば十分」
技術者点数(Z点)は重要ですが、
それだけでは総合評定値は伸びません。
実際に、
技術者は揃っているのに点数が伸びない
というケースの原因が、社会性点数の不足ということは少なくありません。
「社会保険は社長だけ入っていればいい」
法人の場合、原則として厚生年金・健康保険は適用対象です。
家族経営でも、
- 役員報酬がある
- 従業員として従事している
場合は、適用対象になることがあります。
ここは誤解が非常に多い部分です。
「建退共は元請けの制度」
建退共は元請け限定ではありません。
経審では、会社としての加入体制が評価されます。
未加入のまま放置していると、
本来取れるはずの点数を失っている可能性があります。
まとめ|社会性点数は“会社の姿勢”が表れる
社会性点数(W点)は、
- 売上
- 資格
- 利益
のような数字ではなく、
会社としてどれだけ整備されているか
が問われる項目です。
そして特徴は、
- 戦略的に改善できる
- 放置すると差が広がる
という点にあります。
福井県の入札実務では、
Cランク・Bランク帯での数点の差が、
受注機会に影響することもあります。
社会性点数は、
「やっている会社」と「やっていない会社」で差がつく分野です。
まずは自社の体制を確認し、
改善できる項目から一つずつ整えていくことが重要です。
建設業許可・経営事項審査・入札参加資格のご相談はお任せください
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