はじめに
経審は「受けるかどうか」ではなく、「何点取れるか」です。
経営事項審査(経審)は、
ただ申請すれば終わりの手続きではありません。
本当に重要なのは――
「何点を取るか」 です。
入札参加資格では、この経審の点数によって
Aランク・Bランクなどの格付けが行われます。
つまり、経審とは
📊 会社の実力を数値化する“経営の通知表”
のようなものです。
しかし実際の相談では、こうした声をよく耳にします。
・「売上が高ければ有利なんですよね?」
・「赤字だと受けられないんですか?」
・「資格があれば点数は上がりますか?」
・「何をすれば点数が上がるんですか?」
経審の点数は、
売上だけで決まるわけでも、
資格だけで決まるわけでもありません。
売上、財務内容、技術者、社会保険加入状況など――
複数の要素が組み合わさって、最終的な「総合評定値(P点)」が決まります。
この記事では、
✔ 経審の点数はどのように構成されているのか
✔ それぞれの項目は何を見られているのか
✔ どこが対策できる部分なのか
を、福井県での実務を踏まえてわかりやすく解説します。
「点数の仕組み」が分かれば、
経審は怖い制度ではありません。
まずは、全体像から整理していきましょう。
経審の点数はどう構成されているか?(全体像)
経審の最終的な点数は、
総合評定値(P点)
と呼ばれます。
このP点が、そのまま入札参加資格の格付けに使われます。
■ 図解イメージ:P点の構造
┌───────────┐
│ 総合評定値 P点 │
└───────────┘
↓
┌─────┬─────┬─────┬─────┬─────┐
│ X1 │ X2 │ Y │ Z │ W │
│ 売上規模 │ 財務内容 │ 技術力 │ 社会性 │ 調整点 │
└─────┴─────┴─────┴─────┴─────┘
つまり、P点は
「売上」+「財務」+「技術者」+「社会性」などの総合点」
で決まります。
■ それぞれ何を見ているのか?
🔹 X1:完成工事高(売上規模)
・業種別の完成工事高
・直前2年平均
・元請実績など
👉 会社の“規模”を見る指標
🔹 X2:経営状況(財務内容)
・自己資本比率
・利益率
・負債の状況
・キャッシュフロー など
👉 会社の“財務の健全性”を見る指標
(※ここは⑧の記事で詳しく解説します)
🔹 Y:技術力
・営業所技術者の資格
・1級/2級の人数
・監理技術者
・技術職員数
👉 会社の“技術力”を見る指標
(※⑥で詳しく解説)
🔹 Z:社会性等
・社会保険加入
・建退共
・CPD
・ISO
・防災協定
・法令遵守状況 など
👉 会社の“取り組み姿勢”を見る指標
(※⑦で詳しく解説)
🔹 W:評点調整
全体バランスを調整する項目。
実務上はそこまで強く意識する必要はありません。
■ 重要ポイント
経審は
✔ 売上だけで決まらない
✔ 赤字でも受けられる
✔ 技術者だけでも足りない
✔ 社会性の取り組みが大きく影響する
つまり、
「経営全体のバランス」が点数になる制度
なのです。
X1:完成工事高(売上規模)
経審における「X1」は、
完成工事高(売上規模)を評価する項目です。
簡単に言えば、
「どれくらいの規模の工事をこなしている会社か」
を数値化する部分です。
■ どの売上が対象になるのか?
評価対象になるのは、
✔ 直前2年間の完成工事高
✔ 業種ごとの工事実績
です。
経審では、原則として
2年平均の完成工事高
が使われます。
つまり、
・去年だけ売上が大きくても
・一時的に受注が集中していても
平均で見られるため、安定性が重視されます。
■ 業種ごとに点数が決まる
建設業許可と同じく、
経審も「業種ごと」に点数が出ます。
例:
・土木一式工事
・建築一式工事
・電気工事
・管工事 など
たとえば、
土木の売上が高くても、
電気の売上が少なければ、
電気のP点は伸びません。
👉 入札を狙う業種の売上構成が重要になります。
■ 元請と下請の違いは?
元請完成工事高は、一定の評価対象になります。
ただし、
「元請が多い=自動的に大幅加点」
という単純な仕組みではありません。
あくまで評価要素のひとつです。
■ 実務上の重要ポイント(福井対応)
ここが一番大事です。
① 売上が高ければ有利、とは限らない
経審は“総合評価”です。
売上が大きくても、
・財務が弱い
・技術者が少ない
・社会性点数が低い
と、思ったほどP点は伸びません。
② 業種の選択が非常に重要
経審は「申請する業種」を選びます。
・全部出すべきか?
・絞るべきか?
これは戦略判断になります。
福井県の入札市場を踏まえて、
狙うランクに合わせた業種設計が必要です。
③ 売上の“作り方”も影響する
・決算期をまたぐ工事
・出来高計上のタイミング
・完成基準の扱い
税務処理と経審評価はリンクします。
👉 税理士との連携が重要になる理由です。
■ まとめ
X1は、
「会社の規模」を測る項目
ですが、
それだけで勝負が決まるわけではありません。
むしろ、
売上 × 財務 × 技術 × 社会性
のバランスが重要
というのが経審の特徴です。
X2:経営状況(財務評価)
X2は、
会社の「財務の健全性」を評価する項目です。
簡単に言えば、
「この会社は経営的に安定しているか?」
を数値化する部分です。
■ ここでよくある誤解
実務でよく聞かれるのが、次の質問です。
・「赤字だと経審は受けられませんよね?」
・「借入が多いと不利ですか?」
・「小さい会社は点数が伸びませんか?」
結論から言うと――
赤字でも経審は受けられます。
ただし、点数には影響します。
■ 何を見られているのか?
経営状況分析では、主に次のような指標が評価されます。
🔹 ① 自己資本比率
自己資本がどれだけあるか。
財務の安定性を見る代表的な指標です。
🔹 ② 利益率
営業利益・経常利益など。
「きちんと利益を出せているか」を見ます。
🔹 ③ 負債の状況
借入が過大でないか。
資金繰りリスクを評価します。
🔹 ④ キャッシュフロー
お金の流れが健全かどうか。
つまりX2は、
「規模」ではなく「体質」を見る項目
なのです。
■ 赤字の場合はどうなる?
赤字=即アウトではありません。
ただし、
・利益率が下がる
・自己資本が減る
などの影響で、X2の点数は下がります。
一方で、
✔ 債務超過でない
✔ 自己資本が一定ある
✔ 安定した売上がある
といった場合は、極端に低くなるとは限りません。
■ 実務上の重要ポイント(福井対応)
ここが戦略ポイントです。
① 決算は“経審を意識して”組み立てる
経審を受ける会社であれば、
・どの利益をどう残すか
・役員報酬をどう設計するか
・内部留保をどう考えるか
は重要です。
税務対策だけを優先すると、
経審では不利になることもあります。
② 税理士との連携がカギ
経審は、
✔ 行政書士
✔ 税理士
✔ 経営者
この三者連携が重要です。
「経審を受ける前提の決算設計」ができるかどうかで、
数十点変わることもあります。
■ まとめ
X2は、
「会社の財務体質」を評価する部分
です。
売上が大きくても、
財務が弱ければ点数は伸びません。
逆に、
規模が小さくても
財務が健全であれば、十分戦えます。
Y:技術力(技術者点数)
Yは、
会社の“技術力”を数値化する項目です。
簡単に言えば、
「この会社は、どれだけ技術的に信頼できるか?」
を評価する部分です。
■ 何が評価対象になるのか?
主に次の項目です。
🔹 ① 技術職員数
・1級資格者
・2級資格者
・実務経験者
・監理技術者資格者
資格の種類ごとに点数が決まっています。
当然ながら、
1級 > 2級 > 実務経験のみ
の順で評価が高くなります。
🔹 ② 営業所技術者(旧:専任技術者)
営業所技術者の資格内容も評価対象になります。
許可のためだけに置いている、ではなく
**経審では“点数の対象”**になります。
🔹 ③ 監理技術者資格者証保有者
監理技術者資格者証の保有も評価対象です。
元請を狙う会社ほど重要になります。
■ 人数が増えれば増えるほど有利?
基本的には有利です。
ただし注意点があります。
✔ 常勤であること
✔ 社会保険加入が確認できること
✔ 名義貸しでないこと
経審では裏付け資料が求められます。
■ 実務上の重要ポイント(福井対応)
① 資格1つで数十点変わる
特に1級資格者が増えると、
P点に与える影響は大きいです。
若手社員に資格取得を促すことは、
将来の入札競争力を高める投資になります。
② 「とりあえず置く」は危険
営業所技術者を形式的に置くだけではなく、
✔ 実態があるか
✔ 常勤性が明確か
が確認されます。
ここは建設業許可と同じく、
実務チェックが入る部分です。
③ 技術者は“経営戦略”
経審は単なる申請ではなく、
人材戦略が点数になる制度
です。
・誰に資格を取らせるか
・どの業種を伸ばすか
・監理技術者を育成するか
これらがそのままP点に反映されます。
■ まとめ
Yは、
「会社の技術的信用力」
を評価する部分です。
売上や財務とは違い、
対策しやすい項目でもあります。
だからこそ、
資格取得・人材育成は
中長期的な経審対策になります。
Z:社会性等(その他審査項目)
Zは、
「会社としての取り組み姿勢」
を評価する項目です。
売上や財務とは違い、
✔ 日頃の経営姿勢
✔ コンプライアンス体制
✔ 社会的な取り組み
が点数になります。
■ 主な評価項目
代表的なものを整理します。
🔹 ① 社会保険加入状況
・健康保険
・厚生年金
・雇用保険
適正加入が前提です。
未加入や不備があると、大きく減点されます。
🔹 ② 建退共加入
建設業退職金共済制度への加入状況。
加入しているだけでなく、
適正に運用しているかも重要です。
🔹 ③ CPD(継続学習)
技術者の研修受講実績が評価対象になります。
「資格を取って終わり」ではなく、
継続的な学習が評価されます。
🔹 ④ ISO認証
ISO9001・14001などの認証取得。
規模の大きい会社ほど影響が出やすい項目です。
🔹 ⑤ 防災協定・表彰歴
自治体との防災協定や、
国・県からの表彰も評価対象になります。
福井県では防災関連の取り組みは比較的重要です。
🔹 ⑥ 法令遵守状況
営業停止や指名停止歴があると減点対象になります。
■ 実務上の重要ポイント(福井対応)
ここが戦略です。
① Zは“努力が点数になる”項目
売上はすぐには増えません。
1級資格もすぐには取れません。
しかし、
✔ 建退共に加入する
✔ CPDを意識する
✔ 防災協定を検討する
などは、比較的取り組みやすい。
② 中小企業ほど差がつく
規模が小さい会社でも、
社会性項目をしっかり押さえている会社は
安定して点数を積み上げています。
実務感覚として、
Zの差でランクが変わるケースは珍しくありません。
③ 減点は痛い
特に社会保険未加入などは、
単なるマイナスでは済みません。
経審以前に、
入札参加自体が難しくなる可能性もあります。
■ まとめ
Zは、
「会社の姿勢」が見られる項目
です。
売上でも資格でもなく、
日頃の経営努力が数値化される部分
とも言えます。
中小企業にとっては、
戦略的に伸ばせる重要項目です。
W:評点調整(W点)とは?
経審の点数(P点)は、
売上(X1)や財務(X2)、技術(Y)、社会性(Z)などを積み上げて決まりますが、
最後に 「W:評点調整」 という“調整枠”が入ります。
このW点は、ざっくり言うと――
点数が極端に偏らないように、全体バランスを整えるための項目
です。
■ なぜ「調整」が必要なのか?
経審は、会社を総合評価する制度です。
もし調整が無いと、
- 売上だけ大きい会社が過大評価される
- 逆に、ある項目だけ突出している会社が評価されすぎる
といった偏りが起きやすくなります。
そこでW点が入ることで、
“総合点としての妥当性”に近づける
という役割を担っています。
■ 実務上、W点はどれくらい意識すべき?
結論から言うと――
W点だけを狙って対策する必要は、ほぼありません。
W点は「調整」なので、
- X1(売上)
- X2(財務)
- Y(技術)
- Z(社会性)
の土台が整えば、結果として整う性質です。
逆に言うと、
W点で逆転するより、X2・Y・Zで確実に積み上げる方が現実的
です。
■ ただし注意点(ここだけ押さえる)
W点は単独で狙うものではないですが、次のようなケースでは影響が出やすいです。
- 売上は大きいが財務が弱い
- 技術者が少なく、社会性も弱い
- どこか1項目だけ突出して他が薄い
こういう「偏った会社」は、総合点として伸びにくくなります。
■ まとめ
W点は、
会社の点数が“バランスよく見えるように整える”ための調整項目
です。
対策の優先順位は高くありません。
まずは
- X2(財務)
- Y(技術者)
- Z(社会性)
の“伸ばせるところ”を押さえるのが、実務的に一番効きます。
P点はどう使われるのか?(入札参加資格との関係)
ここまで見てきた
- X1(売上規模)
- X2(財務)
- Y(技術力)
- Z(社会性)
- W(調整)
これらを合計したものが、
総合評定値(P点)
です。
では、このP点は何に使われるのでしょうか?
■ P点=入札参加資格の“基準点”
P点は、そのまま
公共工事の「入札参加資格審査」
に使われます。
つまり、
✔ 経審を受ける
↓
✔ P点が出る
↓
✔ その点数をもとに自治体が格付けする
という流れです。
■ 格付け(A・B・Cランクなど)
多くの自治体では、
- Aランク
- Bランク
- Cランク
といった区分があります。
このランクによって、
- 入札できる工事の金額上限
- 指名対象になる範囲
が決まります。
■ 福井県の場合(実務感覚)
福井県でも、
P点を基準として格付けが行われます。
つまり、
P点が変われば、入札できる土俵が変わる
ということです。
例えば、
- 数十点の差でランクが変わる
- ランクが変われば受注機会が変わる
というケースは珍しくありません。
■ よくある誤解
「経審は受ければいい」
ではありません。
重要なのは、
“どのランクを目指すのか”
です。
- 今の売上規模でCランクを安定させるのか
- 将来的にBランクを目指すのか
- 元請主体でAを狙うのか
経営戦略と連動します。
■ 経審は“経営設計”そのもの
ここまで見てきた通り、
経審は単なる書類審査ではありません。
✔ 売上構成
✔ 財務体質
✔ 技術者育成
✔ 社会保険・建退共
✔ 経営姿勢
すべてが点数になります。
つまり、
経審=会社の経営戦略の結果
なのです。
■ 経審の点数構造(総復習図)
ここまでの内容を、もう一度まとめます。
【図解】総合評定値(P点)の全体像
┌───────────┐
│ 総合評定値 P点 │
└───────────┘
↓
┌─────┬─────┬─────┬─────┬─────┐
│ X1 │ X2 │ Y │ Z │ W │
│ 売上規模 │ 財務内容 │ 技術力 │ 社会性 │ 調整点 │
└─────┴─────┴─────┴─────┴─────┘
■ それぞれの意味をもう一度整理
X1:売上規模
→ どれだけの工事をこなしているか
X2:財務体質
→ 経営が安定しているか
Y:技術力
→ どれだけの技術者を抱えているか
Z:社会性
→ どれだけ健全な経営をしているか
W:全体バランスの調整
■ 経審の本質
経審は、
- 売上だけの制度ではない
- 資格だけの制度でもない
- 財務だけの制度でもない
「会社全体の総合力」を数値化する制度
です。
そしてその結果が、
入札参加資格のランク
に直結します。
■ 大事なのは“バランス”
どこか1つが強いだけでは足りません。
✔ 売上を伸ばす
✔ 財務を整える
✔ 技術者を育てる
✔ 社会性を積み上げる
この積み重ねが、そのままP点になります。
まとめ|経審は「経営の結果」が点数になる制度
経営事項審査(経審)は、
単なる申請手続きではありません。
売上だけでもなく、
資格の数だけでもなく、
財務状況だけでもありません。
経審は、
- どれだけの工事を行っているか(X1)
- 財務は健全か(X2)
- 技術者をどれだけ育成しているか(Y)
- 社会保険や建退共などの取り組みはどうか(Z)
- そしてそのバランス(W)
これらを総合して、
「会社としてどれだけ信頼できるか」
を数値化する制度です。
■ 点数は“偶然”ではなく“設計”できる
経審は運ではありません。
✔ どの業種で勝負するか
✔ どの資格を取得させるか
✔ 決算をどう設計するか
✔ 社会性項目をどう積み上げるか
これらはすべて、経営判断です。
つまり、
経審の点数は、経営の積み重ねの結果
と言えます。
■ 大切なのは「今の点数」ではなく「目指すランク」
「うちは何点か?」も重要ですが、
それ以上に重要なのは、
どのランクを目指すのか
どの土俵で戦うのか
という戦略です。
経審は、
公共工事を受注するための通行証であり、
会社の将来設計そのものでもあります。
この記事では、
経審の点数の仕組み(全体像)を解説しました。
次の記事では、
▶ 点数をどう上げるのか(⑤ 点数アップ方法)
を具体的に解説します。
建設業許可・経営事項審査・入札参加資格のご相談はお任せください
建設業許可の取得や更新、経営事項審査(経審)、入札参加資格申請などは、
制度の理解と正確な手続きが重要です。
特に以下のようなご相談を多くいただいております:
- 建設業許可を取得したい
- 経営事項審査を受けたい
- 公共工事への参入を検討している
- 入札参加資格申請を行いたい
- 現在の許可や経審の状況を確認したい
当事務所では、福井県の建設業者様を対象に、
- 建設業許可(新規・更新・変更)
- 経営事項審査申請
- 入札参加資格申請
まで、一貫してサポートしております。
初めての方にも分かりやすくご説明いたしますので、
安心してご相談ください。
ご相談は無料です。
福井県で建設業許可・経営事項審査・入札参加資格申請をご検討の際は、
お気軽にお問い合わせください。


