はじめに
経営事項審査(経審)を受ける建設業者様から、よくいただくご質問があります。
「赤字だと経審は不利になりますか?」
「自己資本が少ないと点数は下がりますか?」
「決算書って、どこを見られているんですか?」
これらの疑問に直結しているのが、**「経営状況分析(Y点)」**です。
経営状況分析は、会社の決算書をもとに財務内容を数値化し、点数として評価する仕組みです。
つまり、日々の経営の結果がそのまま“経審の点数”に反映される重要な部分といえます。
単年度が赤字でも問題はないのか。
借入金が多いと不利になるのか。
節税対策は経審ではどう評価されるのか。
実はここを正しく理解している会社は多くありません。
この記事では、福井県で経審を受ける建設業者様向けに、
- 経営状況分析とは何か
- Y点の仕組み
- 決算書のどこが評価されるのか
- 点数に影響するポイント
を、できるだけわかりやすく解説していきます。
経営状況分析は単なる“手続き”ではありません。
自社の財務体質を見直すヒントにもなる、重要な経営指標です。
まずは、経営状況分析の全体像から見ていきましょう。
経営状況分析とは何か?(Y点の正体)
経営事項審査(経審)の点数は、主に次の4つの要素で構成されています。
- X点:完成工事高(規模)
- Y点:経営状況分析(財務内容)
- Z点:技術力
- W点:社会性等
このうち、**Y点にあたるのが「経営状況分析」**です。
経営状況分析とは、会社の決算書をもとに財務内容を数値化し、一定の計算式によって評価点を算出する制度です。
単に売上が大きいかどうかではなく、
- 利益は出ているか
- 財務体質は健全か
- 借入依存度は高すぎないか
- 債務を返済できる力があるか
といった“経営の中身”がチェックされます。
■ 誰が行うのか?
経営状況分析は、都道府県ではなく、**国土交通大臣の登録を受けた「登録経営状況分析機関」**が行います。
福井県で経審を受ける場合も、
- 決算確定
- 登録分析機関へ経営状況分析を申請
- 「経営状況分析結果通知書」を取得
- その後に福井県へ経審申請
という流れになります。
つまり、経営状況分析は経審の“前段階”の手続きです。
■ なぜ重要なのか?
Y点は、完成工事高(X点)とは違い、規模ではなく「質」を評価します。
売上が大きくても、
- 利益が出ていない
- 借入過多で財務が不安定
- 自己資本が極端に少ない
といった場合、Y点は伸びません。
逆に、規模がそれほど大きくなくても、
- 安定して利益を出している
- 財務体質が健全
- 債務返済能力が高い
会社は、Y点で有利になります。
経営状況分析は、いわば**会社の“財務の通信簿”**です。
経営状況分析の流れ(実務フロー)
経営状況分析は、思いつきで申請できるものではありません。
決算から経審申請までの流れの中で、順番が決まっています。
福井県で経審を受ける場合の基本的な流れは、次のとおりです。
■ ステップ① 決算の確定
まず前提となるのが「決算の確定」です。
- 株主総会等での承認
- 決算書の確定
- 税務申告
ここが終わっていなければ、経営状況分析はできません。
経審は「審査基準日(通常は決算日)」をもとに評価されますので、
確定した直近決算の数値が対象になります。
■ ステップ② 登録経営状況分析機関へ申請
次に、国土交通大臣登録の分析機関へ経営状況分析を申請します。
提出する主な書類は、
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 完成工事原価報告書
- 株主資本等変動計算書 など
です。
ここで注意すべきなのは、
👉 税務申告用の決算書と、建設業法様式の決算書は必ずしも同じではない
という点です。
建設業法に基づく様式で整理された財務諸表が必要になります。
■ ステップ③ 経営状況分析結果通知書の取得
申請後、分析機関から
「経営状況分析結果通知書」
が発行されます。
ここに記載されている
- 各評価指標の数値
- 総合評点(Y点)
が、そのまま経審の申請資料になります。
■ ステップ④ 福井県へ経審申請
分析結果通知書を添付して、
福井県へ経営事項審査を申請します。
つまり、
経営状況分析 → 経審申請
という順番が絶対です。
ここを逆にすることはできません。
■ 実務上よくある注意点
✔ 決算確定が遅れて経審スケジュールが後ろ倒しになる
✔ 分析申請の段階で財務数値の誤りが見つかる
✔ 税理士との認識ズレが起きる
特に入札参加資格申請を控えている会社は、
スケジュール管理が非常に重要です。
経営状況分析は単なる“点数算出作業”ではなく、
決算内容を一度客観的に確認するプロセスでもあります。
経営状況分析の8つの評価指標とは?
経営状況分析(Y点)は、決算書の数値をもとに
8つの財務指標で評価されます。
これらは大きく分けると、次の4つの視点から会社を見ています。
① 収益性(利益を出す力)
■ 総資本売上総利益率
→ 会社全体の資産を使ってどれだけ効率よく利益を生み出しているか
■ 売上高経常利益率
→ 売上に対してどれだけ経常利益を出しているか
✔ 利益が安定している会社は高評価
✔ 単年度赤字だとマイナス方向に影響
ここでは「儲かっているかどうか」が見られています。
② 効率性(資産の回転力)
■ 総資本回転率
→ 投下した資本をどれだけ効率よく売上に結びつけているか
✔ 過大な在庫や遊休資産があると評価は下がる
✔ コンパクトな財務体質は有利
「ムダなく回している会社かどうか」がポイントです。
③ 財務健全性(安全性)
■ 自己資本比率
→ 会社の資産のうち、どれだけが自己資本か
■ 負債回転期間
→ 借入金をどれくらいの期間で返せるか
✔ 自己資本が厚い会社は高評価
✔ 借入依存度が高いと不利
✔ 債務超過は大きくマイナス
ここは金融機関と同じ目線です。
「倒れにくい会社かどうか」が見られています。
④ 債務償還能力(返済できる力)
■ 利益剰余金
→ これまでの利益の蓄積
■ EBITDA系指標
→ 現金ベースでどれだけ返済余力があるか
✔ 利益の積み上げがある会社は強い
✔ 役員借入金だらけの会社は注意
「借金を返せる体力があるか」が評価されます。
■ ポイント:売上の大きさは直接関係しない
経営状況分析は、
売上が大きい会社が必ず有利
という仕組みではありません。
むしろ、
- 利益をきちんと出している
- 借入が過度でない
- 自己資本が積み上がっている
会社の方が評価されます。
規模(X点)とは別の観点で、
経営の質が問われるのがY点です。
■ 赤字でも即アウトではない
よくある誤解ですが、
✔ 単年度赤字 = 即低評価
ではありません。
過去の利益蓄積や自己資本の厚みがあれば、
大きな減点にならないケースもあります。
ただし、
- 債務超過
- 利益剰余金マイナスが続く
- 借入過多
は明確にマイナス要素です。
経営状況分析は、
単なる点数計算ではなく「会社の体力測定」です。
赤字・借入金はどこまで影響するのか?
経営状況分析について、最も多いご相談がこれです。
「今期赤字なんですが、経審はもうダメでしょうか?」
「借入金がかなりあるのですが、不利になりますか?」
結論から申し上げると、
単年度赤字=即アウトではありません。
しかし、内容によっては大きく影響します。
順番に整理していきます。
■ 単年度赤字の場合
経営状況分析は「1年分の損益」だけを見ているわけではありません。
評価には、
- 利益剰余金(過去の利益の蓄積)
- 自己資本比率
- 債務償還能力
も含まれます。
そのため、
✔ 今期だけ一時的に赤字
✔ 過去に利益を積み上げている
✔ 自己資本が厚い
このような会社であれば、致命的な評価にはなりません。
一方で、
- 赤字が続いている
- 利益剰余金がマイナス
- 自己資本が薄い
場合は、Y点は明確に下がります。
■ 債務超過はどうか?
ここは厳しいポイントです。
債務超過は大きなマイナス評価になります。
債務超過とは、
負債 > 資産
の状態です。
自己資本比率がマイナスになり、
財務健全性の評価が大きく下がります。
入札を見据える場合、
債務超過は早急な改善が必要です。
■ 借入金が多い場合
借入金があること自体が即マイナスではありません。
問題なのは、
- 返済能力を超えているかどうか
- 利益でカバーできているかどうか
です。
例えば、
✔ 利益が安定している
✔ 返済計画が明確
✔ EBITDAがしっかり出ている
会社であれば、極端な減点にはなりません。
しかし、
- 短期借入が膨らんでいる
- 利益が出ていない
- 役員借入金で実態が不透明
といった場合は評価が下がります。
■ 節税は有利か?
ここも誤解が多いところです。
税務上の節税対策は、
✔ 当期利益を圧縮する
✔ 自己資本の積み上げを抑える
結果として、経営状況分析では不利になることがあります。
つまり、
「税金を減らす=経審で有利」
ではありません。
入札を重視する会社は、
税務と経審を分けて考える必要があります。
■ まとめ
- 単年度赤字は即アウトではない
- 債務超過は大きなマイナス
- 借入は“多さ”より“返せるか”が重要
- 節税=高評価ではない
経営状況分析は、会社の体力を冷静に数値化する制度です。
だからこそ、
決算前から意識しておくことが重要になります。
Y点を上げるためにできる具体策
経営状況分析(Y点)は、
申請直前に“操作”できるものではありません。
しかし、
決算前から意識していれば、改善できる部分はあります。
ここでは、実務上よく行われる対策を整理します。
① 利益を安定させる(最重要)
最も基本で、最も重要なのがこれです。
- 売上の波を抑える
- 原価管理を徹底する
- 不採算工事を減らす
Y点は「継続的に利益を出せる会社か」を見ています。
単年度の大きな黒字よりも、
安定した経常利益の積み上げの方が評価につながります。
② 自己資本を厚くする
自己資本比率は重要な指標です。
具体的には、
- 利益を内部留保する
- 無理な役員報酬増額を避ける
- 配当の出し過ぎに注意する
などが考えられます。
特に、利益剰余金の積み上げは
Y点改善に直結します。
③ 不要な借入を整理する
借入が悪いわけではありません。
問題は、
- 実質的に不要な短期借入
- 形だけ残っている役員借入金
- 実態のない仮勘定
です。
決算前に整理できるものは整理することで、
財務指標は改善します。
④ 役員借入金の扱いに注意
中小建設業でよくあるのが、
役員からの借入で資金繰りを回しているケース
これは一概に悪いわけではありませんが、
- 財務の透明性
- 債務構造のバランス
という観点でマイナス評価になる場合があります。
可能であれば、資本組入れ等の検討も選択肢になります。
⑤ 決算直前の“過度な節税”に注意
前章でも触れましたが、
- 利益をゼロに近づける
- 設備投資で大きく圧縮する
といった極端な節税は、
経審評価では不利になることがあります。
入札参加を本気で目指す会社は、
税務と経審のバランス
を考えた決算設計が重要です。
⑥ 分析は「決算後」ではなく「決算前」に
最も大事なのはここです。
経営状況分析は、
決算が確定した時点で結果がほぼ決まります。
つまり、
経審の対策は、決算が終わってからでは遅い
ということです。
理想は、
- 決算数か月前から財務を確認
- 想定Y点を試算
- 必要な改善策を検討
という流れです。
■ 経営状況分析は“経営改善ツール”でもある
Y点は単なる入札用の点数ではありません。
- 利益体質か
- 財務は健全か
- 返済能力はあるか
を客観的に示す指標です。
うまく活用すれば、
会社の体質改善にもつながります。
まとめ|経営状況分析は“会社の体力測定”
経営事項審査(経審)における経営状況分析(Y点)は、
単なる事務手続きではありません。
決算書をもとに、
- どれだけ利益を出せているか
- 財務体質は健全か
- 借入に頼りすぎていないか
- 債務を返済できる体力があるか
といった、**会社の“経営の中身”**が評価されます。
単年度赤字でも即アウトではありません。
借入があるから必ず不利になるわけでもありません。
しかし、
- 債務超過
- 利益剰余金のマイナス継続
- 過度な節税による利益圧縮
といった状態は、確実にY点へ影響します。
重要なのは、
経営状況分析は「決算後」に対策するものではない
ということです。
Y点は、日々の経営の積み重ねの結果です。
だからこそ、決算前から意識することで改善の余地があります。
経営状況分析は、
入札のための点数であると同時に、
会社の体質を見直すヒントにもなる指標です。
経審をきっかけに、
自社の財務状況を一度冷静に確認してみることをおすすめします。
建設業許可・経営事項審査・入札参加資格のご相談はお任せください
建設業許可の取得や更新、経営事項審査(経審)、入札参加資格申請などは、
制度の理解と正確な手続きが重要です。
特に以下のようなご相談を多くいただいております:
- 建設業許可を取得したい
- 経営事項審査を受けたい
- 公共工事への参入を検討している
- 入札参加資格申請を行いたい
- 現在の許可や経審の状況を確認したい
当事務所では、福井県の建設業者様を対象に、
- 建設業許可(新規・更新・変更)
- 経営事項審査申請
- 入札参加資格申請
まで、一貫してサポートしております。
初めての方にも分かりやすくご説明いたしますので、
安心してご相談ください。
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